現地時間11月30日(水)、欧州チャンピオンズリーグ第3節はポーランドにてザビエルチェ(ポーランド)と井手智所属するベルリン(ドイツ)の試合が行われ、3-1(25-21, 20-25, 29-27, 27-25)でベルリンがザビエルチェに勝利しました。
欧州チャンピオンズリーグは、欧州バレーボール連盟(CEV)が主催する3つの欧州クラブリーグのうち最高峰のリーグで、日本人がこのリーグでプレーするのは3人目です。
近年では2016/17シーズンにパリバレー(フランス)の古賀太一郎選手が出場していました。
井手選手(厳密には結婚を機に姓を「築城(ついき)」に変更されていますが、本記事では馴染みのある旧姓で紹介します)が所属するベルリンはドイツリーグの強豪クラブで、コロナでキャンセルになったシーズンを除けばリーグ6連覇中で、今シーズンも現在全勝の首位となっています。
それゆえベルリンは欧州チャンピオンズリーグにも毎年参加していて、最高位は3位です。
一方この日の対戦相手のザビエルチェは、現在ポーランドリーグ3位、欧州チャンピオンズリーグも今季初参加のチームなのですが、下馬評的にはザビエルチェの方がベルリンより実力は上で、事実プレシーズンマッチではザビエルチェがベルリンを3-0のストレートで下していました。
しかしこの日はベルリンがそこからのリベンジとなる大金星をあげる結果となりました。
ベルリンがサイドアウトとサーブがうまく機能した一方、ザビエルチェはサーブなどでミスが目立ちました。
特にMVPを取ったベルリンのOPソトラ(チェコ)が21得点、アタック決定率60%と圧巻のパフォーマンスを披露してチームの勝利に大きく貢献しました。
この試合後、井手選手にお話を伺いました。
ー勝利おめでとうございます。
井手: ありがとうございます。
ー今日の試合を振り返っていかがてすか。
井手:試合前からかなり難しい試合になるというのは予想できてました。前回の試合、負けちゃったんですけど、あんまりいい負け方じゃなかったので。今日試合の入りが大事だったんですけど、試合の入りがけっこうよかったというのは今日の収穫というか、よかったところかなというのと、正直相手のサーブミスにかなり助けられた部分があったかなと思います。
ー相手のサーブミスに助けられたとのことでしたが、それ以外部分では今回の勝因として何が上げられますか。
井手:僕らのサイドアウトがかなりよかった。もちろん相手のサーブミスのこともあると思うんですけど、それ以上にパスがある程度返って、サイドアウトがけっこうよかったかなと思います。あとはセッターのハネス(ドイツ)の采配がかなりよかったかなと思います。
ー井手選手個人の出来としてはいかがでしたか。
井手:正直個人としてはちょっと、もうちょっと、なんだろうな、無駄なサービスエースが多いなという感じがします。アウトボールにちょっと当たっちゃったりとか。アンラッキーと言えばアンラッキーなんですけど、やっぱりあの辺のミスを無くしていかないと、あの辺のミスを自分自身が無くしていけばもうちょっとチームに、まあ簡単なゲームにはなるとは思いませんけど、チーム内のメンタル的なところをうまく潤滑させていけるかなと思っています。
ープレシーズンマッチでは同じザビエルチェ相手に0-3で負けていましたが、前回と今回で一番大きく変わった点は何でしたか。
井手:正直(前回の試合の時点で)僕らのチームがこのチャンピオンズリーグでザビエルチェさんと当たるというのがわかっていたので、もちろんプレシーズンだったのでいろんなメンバーを試していたというのもあるんですけど、そのときとメンバーがごろっと変わったというのがひとつ要因かなと思います。あとあまり向こうにデータがなかったかなと思うので、そこは大きいかなと思います。
ーここまで欧州チャンピオンズリーグを3試合戦われきていかがですか。
井手:やっぱり毎試合毎試合のプレッシャーが普通のリーグ戦とは全然違います。チャンピオンズリーグももちろん長いんですけど、リーグ戦はもっと長くて、こうなんて言うのかな、一回の勝ち負けの代償というか、それがかなり大きいというのがチャンピオンズリーグです。なので毎回毎回かなりいいプレッシャーの中で戦えてる、自分自身にとってはすごくいいことではあるんですけど、やっぱりそこが自分自身にとってもすごくプラスになってます。精神的にかなりきつい部分もありますけど、そんな中でそこの部分も成長していけたらなと思います。
ードイツリーグについて、ここまでベルリンは全勝中かと思いますが今シーズンいかがですか。昨シーズンまで在籍されていたフランクフルトのときとの違いなども含めて教えてください。
井手:やっぱり、なんて言うんだろうな、常にチャレンジャーの気持ちではいるんですけど、去年フランクフルトにいた時にベルリンという王者がいてそこに挑戦する、そういうときにあまりプレッシャーというのは正直ないんですよね。だけど今というのは逆に、去年もそうだったんですけど、リーグ戦ほぼ全勝で次のラウンドに行ってみたいな感じで、負けちゃいけないというか負けられないというのがあります。チャンピオンズリーグでもそうですし、今のリーグ戦でもそうなんですけど、そこのプレッシャーというか、負けちゃいけないよねというのが、もちろん負けることもあるかと思うんですけど、負けちゃいけないという雰囲気がチーム内にもありますし、いろんなところからそういうプレッシャーがあるので、そこがかなり去年までとは違うかなというところです。
ー今シーズンのご自身の目標はどこに定められていますか。
井手:もちろん今6年連続とかでベルリンはドイツでチャンピオンになってますけど、やっぱり今年もまずそこを。僕自身もドイツリーグで3年目になるので金メダル欲しいなと思っています。リーグ戦のですね。リーグ戦での金メダルがほしいなと思っています。第一目標、最低限それをクリアするということ。あとはやっぱりこのチャンピオンズリーグ、去年ベスト8までは行ってて、僕が入ってそこまで行けなかったら、もちろん僕だけのせいではないですけど、そこに対するマイナス点というかそういうふうな考え方があるので、やっぱり最低限ベスト8、そしてそこからさらにもう一個上を目指して行けたらと思っています。
ー日本代表復帰というところも目指されているのでしょうか。
井手:もちろん。正直なところ、次のパリオリンピック、もちろんまず予選がありますけど、年齢的にも代表で活動するのはそこが最後かなと僕的には思っているので、やっぱり今年、自分の中では勝負の年だと思っていて、もちろん監督だったりとかに対するアピールというのはまず結果で見せていくしかないかなというところなので、かなりそこに関しては意識しながらやってます。
ー今後のクラブキャリアとしての目標という部分ではどう考えていますか。
井手:まだまだ引退というのは僕は考えていないので、そこに関してはどんどんどんどん上のクラブに行きたいです。僕もやっぱりイタリアリーグやポーランドリーグ、去年までいたリベロが今このザビエルチェにいるんですけど、そういったチャンスがやっぱりあると思うので、ビッグクラブにいてチャンピオンズリーグで戦って、いろんなクラブの監督からとかエージェントからとかに見られて、そういうチャンスがベルリンは他のクラブよりも多いと思います。僕自身はやっぱりもっともっとこう、もちろんベルリンもかなりいいクラブですしレベルは高いんですけど、もっともっと世界のトップレベルじゃないですけど、イタリアリーグだったり、もちろんポーランドもそうですけど、やっぱりそういうところでも挑戦したいなというのはありますね。むしろそこの2択くらいになっちゃうんですけど、そのリーグに参戦していきたいなというのは最終目標ではありますね。やっぱりそこが。
ー日本人選手の海外挑戦、特に世界的にもレベルの高い日本人リベロの海外挑戦ということに関してコメントをいただけますか。
井手:もし今日本で海外挑戦したいなと、たとえば本当に日本はリベロのレベルが高くて、たとえばいいリベロなんだけどいろんなチームの事情があって試合に出れてない選手とかもいると思うんですよ。やっぱりそうやって海外挑戦したいけどいろんな不安があるとかもちろんエージェントを誰にするのか、どうやっていくのとかっていうのはあると思うんですけど、どんどんどんどん本当に挑戦していってほしいなと思いますね。僕でも正直行けたんだから、絶対みんな行けるよっていう、いやあなただから行けたんだよとかじゃなくて僕でも行けたから、たぶん本当にみんな行けるよっていうふうに僕はみんなに教えたいですし、どんどんどんどん日本人選手が海外リーグでプレーすることによって、もっともっとビッグクラブに行けるような選手が出てきて、やっぱりそうなってくると代表のレベルも上がってきますし、やっぱりそのレベルでずっとプレーしてるってなると、やっぱりその代表に行った時でも、外国人選手とか強い国と当たったとしてもあいつはあの人たちとやっているからというふうな考えになると思うので、どんどんどんどん挑戦していってほしいなというふうには思いますね。もちろんリベロだけじゃなくてスパイカーでも全然通用すると僕は思ったりもしているので。
ーアウトサイドヒッターに限らずスパイカーのどのポジションでもということですか。
そうですね。日本人の器用さとか、たとえばパスの正確さ、本当に海外のクラブでもやっぱり全然日本人の方が上手い。あんまりこう大きい声では言えないですけど笑、全然日本人の方が上手だなっていう選手がやっぱりいるので、どんどんどんどん挑戦していってほしいなという気持ちはありますね。もちろんいろんな問題があるので、日本のVリーグの場合って。社員だったりとかってそういうのがあるから、あんまり無理には勧められないですけど、行きたいと思っているんだったら人生一回だし、若いし、正直僕でもまだ若いと思っているので、どうにでもなるというのがあるので、そこはどんどん挑戦していってほしいなというふうには思っています。
写真:CEV、筆者撮影