男子決勝
ザクサ(ポーランド)- ヤストシェンブスキ・ヴェンギェル(ポーランド、以下JW)
3-2(26-28, 25-22, 25-14, 28-30, 15-12)
今季のポーランドリーグ決勝戦と同一カードとなった男子決勝は約2時間半に及ぶ大激戦になりました。
第1セットはポーランドリーグを制覇したJWがオポジットのボワイエ(フランス)を中心にアタックを決めて26-28の僅差で先取しますが、第2セットはアウトサイドヒッターのベドノシュを中心に得点を重ねたザクサが25-22で奪い返します。
続く第3セットは勢いそのままにこのセットだけで8本のブロックポイントを決めたザクサがJWに反撃の隙を与えず25-14で連取。
そのままザクサが行くかと思われましたが、アウトサイドヒッターのフォルナルが奮起したJWが第4セットを28-30とギリギリで取り切ってタイブレークに持ち込みます。
第5セットは終始サーブレシーブを崩されながらもサイドアタッカー3人が高いアタック決定率で得点を取り続けたザクサが15-12で取り切り、3-2でJWに勝利しました。
最終順位
優勝:ザクサ・ケンジェジンコジレ(ポーランド、3年連続3回目)
準優勝:ヤストシェンブスキ・ヴェンギェル(ポーランド)
3位:ペルージャ(イタリア)、ハルクバンク・アンカラ(トルコ)
MVP:デイヴィッド・スミス(アメリカ)
(決勝戦成績:13得点(うちサーブ2、ブロック4)、アタック決定率78%)
感想など
女子はトルコダービー、男子はポーランドダービー、でも会場はイタリア。確かにワクフバンクにイタリア女子バレー界のスーパースターであるエゴヌはいましたが、正直「集客大丈夫かな」と心配していました。
でもこれはいらぬ心配でした。ほぼ満席、上の方までびっしりとお客さんが埋まっていました。
そしてどこからでも聞こえてくるポーランド語(笑)。
ポーランドからイタリアまでは飛行機で2時間、チケットも安いものだと3000円くらいからLCCが飛んでいます。またどちらもシェンゲン協定加盟国でパスポートチェックもないため、ポーランド人は日本の国内旅行以上に軽い感覚でイタリアまで行けちゃいます。
ポーランド人ファンは、もちろん両クラブのユニフォームや応援Tシャツを着ている人が多かったですが、ポーランド代表のユニフォーム(クビアクとか)を着ている人も少なくなく、どちらかのクラブのファンだけでなくただのポーランドバレーボールファンも一定数いました。
トルコも、特に女子バレーは人気ですが、ポーランドほど軽くは往来できないためか、現地のファンらしき人の数はまばらでした。
それでも試合になると各々のお客さんがそれぞれのチームに声援を送り大いに盛り上がりました。ただやっぱり男子決勝は本当にポーランドでやってるみたいな雰囲気でビビりました。「ここは本当にイタリーかい?」と(笑)。
試合内容ですが、まず女子決勝に関してはもう両オポジットの打ち合い。特にエゴヌはひとりで57本打って37本決めるバケモノっぷり。たしかに彼女は絶好調でボールが集まるのはわかるんだけど、見ているこっちとしてはなんだか一昔前の男子Vリーグの試合を見ているようで面白みには欠けていました。
しかしおそらくこのスーパーオポジットにボールを集めまくるのが現代女子バレーの潮流になっています。男子のオポジットがサーブレシーブにも入るオールラウンダー化してきているのとは逆の現象がおきており、このことも相まって僕は女子バレーから遠ざかっています(笑)。
ちなみにトルコダービーとなった女子決勝ですが、今季のトルコリーグを制したのはこのどちらでもないフェネルバフチェで、トルコクラブのレベルの高さが目立ったシーズンだったなと思います。
男子決勝はポーランドダービー。ポーランド在住の僕からしたらよく知るチーム同士の対決でした。この両チームは今シーズンの国内タイトルすべてで決勝戦を戦っていて、この試合までにJWがスーパーカップとリーグ、ザクサがポーランドカップのタイトルをそれぞれ獲得していました。
したがって戦績的にはどっちが勝ってもおかしくない状況でしたが、個人的にはザクサが優勝するのでは睨んでいました。
ザクサにはここまで大会を2連覇中というクラブとして圧倒的な経験があるのはもちろん、準々決勝でトレント(イタリア)、準決勝でペルージャ(イタリア)とイタリアの強豪を2つも退けて勝ち上がってきていました。一方のJWはここまでイタリアのクラブとの対戦がないまま比較的楽に勝ち上がってきてしまっていたのです。
男子のチャンピオンズリーグの歴史を紐解くと、その優勝はほとんどでイタリアかロシア(ソ連)のクラブが優勝しています。今は戦争でロシアのクラブは出られませんが、イタリアもロシアも倒さずにヨーロッパチャンピオンはあり得ません。というかそんなクラブには優勝してほしくない(笑)。
実際にこの事実は選手たちのメンタル面にも多少の影響を与えていたと思います。事実、わずかな差ながらこの大舞台でより実力を発揮できたザクサが見事に優勝しました。特に3年連続の決勝となったザクサのシリフカとMVPを取ったスミスはシーズンを通してもベストに近いパフォーマンスだったと思います(同じく3回目だったカチュマレクは微妙だったけど(笑))。
ただ男子決勝の試合開始が20時半で、試合が終わったのが23時。そこから準備して授賞式をやっているとその途中で0時を超えました。これでは近隣の人でもその日のうちに公共交通での帰宅が不可能になってしまうので個人的にはとても理解しがたいんですが、リーグ戦も普通に20時半や21時近くからやってるからヨーロッパでは普通の感覚なのかもしれませんね…(笑)。
石川祐希のミラノは今季惜しくもリーグ4位で来季のチャンピオンズリーグ参加権を逃してしまいました。しかし今後この欧州チャンピオンズリーグ決勝の舞台に日本人選手が立つ日もそう遠くはないのかもしれません。そうなったら本当に最高だな。
写真:CEV, 筆者撮影