広告 コラム 日本代表 男子

イランが日本を強くした

2023年8月26日

今年7月、バレーボール日本男子代表はVNLで3位に輝き、46年ぶりに世界大会でのメダル獲得を果たした。この偉業達成には石川祐希や髙橋藍といった中心選手の存在やフランス人のブラン監督の手腕によるところが大きいが、「アジアのライバル」であるイランの存在なくして日本チームの成長はなかったと私は考える。

2010年代前半、日本チームは国際大会で勝てない日々が続いていた。VNLの前身だったワールドリーグは毎年ほぼ最下位、アジアの大会でも勝てず、さらに2014年の世界選手権は約半世紀ぶりに出場を逃した。

それとは対照的にこの間で世界の強豪国のひとつになったのがイランだった。イランはアルゼンチン人の名将ベラスコ監督を招聘。彼の手腕とサイード・マルーフ(元イラン代表)をはじめとする才能あふれる選手たちによって瞬く間に世界の強豪の仲間入りを果たした。2011年にアジア選手権初優勝、2014年ワールドリーグ4位、世界選手権ベスト8、2016年にはオリンピックに初出場でベスト8になった。

事実、日本は2010年以降イランにほとんど勝てなくなった(2015年のアジア選手権ではイランを下して優勝したが、そのときのイランはベストメンバーではなかった)。それまでは普通に勝てていたアジアの国が数年の間に手の届かないところにいったことは、日本チームにとってとてもショックなできごとだったことだと思う。この事実は日本チームの危機感をそれまで以上に大きく煽りたてたに違いない。イランの成功は日本男子に火をつけた。

そこから日本もイランにならうようにチームの改革を行う。まず2017年にフランス人のフィリップ・ブランコーチを招聘。肩書はセカンドコーチであったが、事実上は彼がヘッドコーチとしてチームの先頭に立って改革を行い、日本に世界レベルのバレーボールを叩き込んだ。1年目ですぐに結果を出すことはできなかったが、2018年の新戦力西田の加入と共に徐々にその真価が発揮されていった。

この年のVNLで日本はベストメンバーを揃えたイランに2009年以来9年ぶりの勝利を上げた他、11年ぶりにイタリアも下した。この年以降やっと日本はイランのライバルとなることができたと思う。その後2019年から今日までの対戦成績は日本が5勝2敗で勝ち越している。

現在、男子バレーで世界トップチームと互角に戦えるアジアのチームは日本とイランだけだろう。今回のアジア選手権の試合を見ていてもこの2チームがそれ以外チームのレベルの差は明らかである。また日本とイランからは少なくない選手が世界のトップリーグでプレーしている。これもアジアでは日本とイランだけだ。日本の石川はイランのマルーフ、そしてミラド・エバディプールとイタリアでチームメイトだったこともある。

東西アジアの真のライバルである日本とイランとの決勝戦はきっと驚くべき、歴史的な試合になると思う(ただイランのファンの皆さんには申し訳ないが、私は日本が勝つことを信じている)。

そしていつかアジア選手権だけでなく、世界大会の決勝戦で我々が金メダルをかけて戦う日が来ることを心から願っている。

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