パリ五輪予選プールC、男子日本代表は現地時間7月27日(土)にドイツと対戦し2-3(17-25, 25-23, 25-20, 12-15)で敗れた。
スターティングメンバー
日本
OH:髙橋藍(15)、石川(22)
MB:小野寺(9)、山内(7)
OP:西田(20)
S:関田
L:山本
途中出場:OP宮浦(3)、OH大塚(1)、S深津、MB髙橋健太郎、OH甲斐
ドイツ
OH:ショット(3)、ブランド(6)
MB:ブレーメ(15)、クリック(9)
OP:グロゼル(24)
S:カンパ(5)
L:ツェンガー
途中出場:OHカリチェク(11)、OHライヒャルト(10)、Sティレ、MBマーセ
※ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ
※()は得点
試合レポート
第1セット
序盤からOPグロゼルのサーブから2本のサービスエースを含む7連続ブレイクで2-9とドイツが大きくリードを広げる。日本はOP西田のスパイクやブロックで得点を重ねて10-14と点差をやや縮めるが、OHブランドのスパイクやOPグロゼルのサービスエースで10-17としてドイツが再度点差を広げる。日本はサーブミスも続いて点差を縮めることができず、最後はOPグロゼルのアタックで17-25としたドイツがこのセットを取る。
第2セット
日本は序盤にOP西田とOH石川を中心に得点するが、ミスも重なり点差を広げられず8-7と試合が進む。そこからOP西田のアタックミスやOPグロゼルのブロックでドイツが9-12と抜け出すが、OP西田のサービスエースやOH石川のパイプ攻撃で13-12と日本が逆転する。その後はお互いに連続得点を出しながらも、点差が大きく離れないまま終盤を迎える。OH石川のパイプ攻撃で23-22と日本が先行すると、最後はL山本を中心とする日本の守備からOH髙橋藍とOH石川が続けてスパイクを決めて25-23でこのセットを日本が取る。
第3セット
序盤から長いラリーからOH髙橋藍が決めて3-1、さらにOH石川のサーブからMB山内がスパイクやブロックを決めて7-2と日本が大きくリードする。そこからドイツはMBブレーメのスパイクやブロックで9-8と1点差まで迫るも、OH石川のスパイクなどで14-10と再び点差を広げる。その後もOP西田のサービスエースやMB小野寺の相手OPグロゼルを止めるブロックなどで21-16と点差を広げる。終盤にもMB小野寺がスパイクとサービスエースを決めて24-18と日本がセットポイントを握ると、最後はOH石川がスパイクを決めて25-20でこのセットを日本が取る。
第4セット
序盤はOP西田とMB小野寺のスパイクやサービスエースで日本が7-5とリードする。そこからドイツが3セット目途中から出場したOHカリチェクのスパイクなどで10-12と逆転すると、さらに同じく3セット目途中から出場したOHライヒャルトのサービスエースやOPグロゼルのスパイクで16-19とする。日本はOP西田に替えてOP宮浦を投入。そこからOH石川のサービスエース、OH髙橋藍のスパイクなどで21-21と日本が同点に追いつくと23-24でのドイツのセットポイントもOP宮浦のスパイクで凌いで試合はそのままデュースへ突入。日本は僅かなミスで逆転のチャンスを2度失うもOP宮浦がサービスエースを決めて28-27とようやく逆転。しかし最後は被ブロックとミスでOH石川が連続失点を許し28-30でこのセットをドイツが取る。
第5セット
出だしからOHライヒャルトのサービスエースで0-1、さらにOHライヒャルトとMBクリック連続ブロックで3-7とドイツが大きくリードを保つ。日本はOH石川のスパイクやMB小野寺のサービスエースで9-10と1点差まで迫るもあと1点が出す、逆にOPグロゼルのサーブからブレイクしたドイツに11-14とマッチポイントを握られる。そして最後はOHカリチェクがコート前方に落とすティップで決めて、12-15でこのセットを取り切ったドイツがフルセットの激戦を制した。
TOSHIKI’S MVP
ドイツ:OPジョルジ・グロゼル
24得点(うちブロック5、サーブ4)、アタック効果率22.22%
1セット序盤のサーブから絶大なインパクトを残し、その後もサーブ・ブロック・スパイクで日本にプレッシャーを与え続けた。スパイクに関しては2, 3セット目こそパフォーマンスを落としたものの、4セット目からは復活。タフなフルセットマッチでも関係ない衰えしらずの39歳はキングモンスターだった。
日本:L山本智大
サーブレシーブ成功率36.67%、ディグ15本
多くの選手が調子の上がらない時間帯があった中で、試合を通していつもの仕事ができていたと思うのが山本。ディグはもちろん、ネーションズリーグでドイツ相手に苦しんだサーブレシーブも直接失点ゼロで守り抜いた。
また2セット目の24点目のファインプレーや4セット目20点目の相手のダイレクトをスパイクを拾ったシーンは痺れた。
解説
サーブとディフェンスが良い両チームの試合は事前の予想どおりの長い試合になった。単純にフルセットまでもつれたことはもちろん、お互いにアタックが1本で決まることが少なく見応えのあるラリーが多かったという意味でも長い持久戦となった。
その中で試合の勝敗を分けたポイントだったのが①失点の多さ、②ミドルブロッカーの決定率、③選手層の厚さの3点だった。
ポイント①失点の多さ
ミスやアタック失点(被ブロックとアウトやネットなどのアタックミス)が少ないことは本来日本の強みであったが、今回はそれが多くなってしまった。
ドイツのアタック失点が15点だったのに対して日本は29点と約2倍の点数を相手に与えてしまっていた。OH石川、OH髙橋藍、 OP西田のアウトサイドヒッターの3人全員がアタック効果率20%台というのは最近ではなかなか見ない数字である。
この試合は確かに長いラリーは見られたが、これまでのように日本がリバウンドをとって切り返すという場面が少なかった。ドイツがどいう方法でこれに対応していたのかはわからなかったのだが、リバウンドを簡単に取らせない何かしらの対策をされていたのだと思う。
またミスに関しては、特に4セット目終盤でドイツに2度チャレンジされて2回とも日本のミスが発覚して逆転を逃した場面があった。本当に僅かなタッチネットとアンテナタッチであったが、このようなミスもこれまでの日本にはあまり見られなかった珍しいミスだった(これに関しては的確にチャレンジを行ったドイツベンチもすごかったが)。
そうした意味でこの試合は日本の強みがあまり出せていなかった。
ポイント②ミドルブロッカーの決定力
ドイツのサイド攻撃に対して日本のディフェンスは上手く対応できていたと思うが、ミドルに関してはかなり決められてしまっていた。
MBブレーメが12得点(効果率85.71%)、MBクリックが7得点(効果率77.78%)とドイツのミドルブロッカーは両者とも高いアタック効果率だった。ちなみにMB小野寺は4得点(効果率22.22%)、MB山内は4得点(効果率10.00%)。
日本がドイツのミドルの攻撃にプレッシャーをかけられなかったことで、ドイツの方が比較的楽にサイドアウトを取ることができ、結果試合を有利に進めることができていたと思う。
勝利した先週のポーランドとの親善試合でもポーランドのクイックに対して日本は対応できていなかった。次戦のアルゼンチンもミドルが強力なチームであるので、改めて相手のミドルに対するディフェンスを整えて、逆に日本がミドルからバンバン攻撃を通したい。
ポイント③選手層の厚さ
ドイツは選手層が厚かった。
今回は3セット目途中からアウトサイドヒッターを2人とも替え、結果的にその交代で入った2選手が試合終盤で大活躍して勝利に大きく貢献した。
1人ならまだしも、スタメンのアウトサイドヒッターを2人も替えて勝てるチームはほとんどいない。それができるチームで他にパッと思いつくのはポーランドとフランスくらい。セルビアも入るか。
試合の途中で選手交代をされてしまうと当然された側は改めてその新しい選手に対応していかなければいけない。
ネーションズリーグ決勝戦後のインタビューでフランスとの決勝の敗因のひとつとしてリベロの山本が途中交代で入ったOHティリに対応できなかったことを挙げていたが、そのような状況がさらに2人同時に来たのだから日本としては対応がとても難しかっただろう。
OHショットは元々アタックが決まっておらず、OHブランドとOPグロゼルは2セット目以降アタックの調子を落としてきていて、日本としてはドイツのサイドアタッカー陣を途中まで完全に機能不全に追い込んでいただけに、ヴィニャルスキ監督の策とそれに応えてコートに立った2人に見事にやられてしまった。
総評:ドイツに上手く対応された
いつも以上に失点が多かったことからもわかるように日本の調子は良くなかったと思う。特に第1セットは珍しくS関田とのトスが合ってないようにも見えた。サーブ時にはOH石川がカメラを気にするような仕草を見せることもあった。
かといってドイツの調子が良かったかというと、確かに第1セットは良かったかもしれないが、その後は日本にアウトサイドヒッター2人潰れされたりOPグロゼルが調子を落としたりしてかなり苦しかった。
そこで勇気を持ってアウトサイドヒッターを2人とも変えたヴィニャルスキ監督、それに応えたOHカリチェクとOHライヒャルト、彼ら上手く生かしかつOPグロゼルも復活させたSカンパをはじめドイツチームはすばらしかった。
そうしてドイツに対応した日本にさらにドイツは対応できたが、そのドイツに日本は対応できなかった。
パリオリンピックは残念ながら黒星発進となってしまったが、フルセットとなり1ポイント取れたことは予選を勝ち上がる上では非常に大きいと思う。直近のリオ五輪、東京五輪では共に予選で苦しんでギリギリで勝ち上がったチームがその後優勝していることからわかるように準々決勝にさえ進むことができればあとは何が起こるかわからない。
予選の残る相手もアルゼンチン、アメリカと強豪ぞろいだが、今の日本代表ならきっとやってくれるはず。
プールC順位表(7月27日終了時点)
※各プール2位以上の6チームと3位の中の上位2チームの計8チームが決勝トーナメント進出
1位 アメリカ 1勝 3ポイント
2位 ドイツ 1勝 2ポイント
3位 日本 0勝 1ポイント
4位 アルゼンチン 0勝 0ポイント
次戦情報
予選プールC アルゼンチン戦
7月31日(水)20:00~(日本時間)
テレビ
NHK総合:20:00〜
ネット配信
NHKプラス
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[配信日時]
7月27日(土)午後5時 男子#1 男子#2
8月 3日(土)午後5時 女子#1
8月10日(土)午後5時 女子#2
8月24日(土)午後5時 男子#3
8月31日(土)午後5時 女子#3
9月 7日(土)午後5時 男子#4
9月14日(土)午後5時 女子#4
(TBSテレビリリースより引用)
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写真:Volleyball World