日本代表 男子

【解説】パリ五輪男子バレー日本対アルゼンチン:サーブとミドルで掴んだ勝利

2024年8月1日

パリ五輪予選プールC、男子日本代表は現地時間7月31日(水)にアルゼンチンと対戦し3-1(25-16, 25-22, 18-25, 25-23)で勝利した。

スターティングメンバー

ポジション:OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OP=オポジット、S=セッター、L=リベロ

()は得点

日本

OH:髙橋藍(14)、石川(11)
MB:小野寺(12)、山内(6)
OP:西田(21)
S:関田(1)
L:山本

途中出場:OP宮浦(4)、OH大塚(1)、OH甲斐(1)、MB髙橋健太郎

アルゼンチン

OH:コンテ(19)、パロンスキー(4)
MB:ロセル(7)、ゼルバ(2)
OP:リマ(16)
S:デチェッコ(4)
L:ダナニ

途中出場:OHマルティネス(5)、MBラモス(4)、OPクカルツェフ(1)、Sサンチェス、OHヴィセンティン

試合レポート

第1セット

序盤はお互いに連続得点を出しながらの競った展開となり、日本はOP西田のスパイクやサービスエース、アルゼンチンはOHパロンスキーらで得点し9-9と試合が進む。そこからOP西田の連続サービスエースとスパイクで14-10と日本が抜け出すと、終盤にもOP西田が2連続サービスエースを決めて22-15とアルゼンチンを突き放す。最後はOH髙橋藍の2本目サービスエースで25-16として日本がこのセットを取る。

第2セット

序盤にMBゼルバのサービスエースなどで0-3とアルゼンチンが抜け出すと、さらにOH髙橋藍らがアルゼンチンのブロックに続けて捕まるなどして1-7と点差が広がる。そこからはサイドアウトの取り合いになるが、中盤にOP西田のスパイクミスで8-15とまた点差が離れる。しかしS関田のサーブから切り返してOH石川らがスパイクを決めて4連続ブレイクで14-16と日本が一気に点差を詰めると、加えてMB小野寺のスパイクや相手のミスで20-20と同点に追いつく。さらにビデオ判定結果にアルゼンチンが執拗に抗議したことでレッドカードが出て21-20と日本が逆転すると、最後はOH石川がアタックを続けて決めて25-22でこのセットを日本が取る。

第3セット

序盤からOHコンテのブロックとスパイク、OPリマのスパイクとサービスエースなどでアルゼンチンが得点を重ねて5-8と先行する。日本はOP西田のアタックでブレイクを決めて7-8と1点差に迫るも、SデチェッコとMBロセルのサービスエースで12-15と再度離される。さらにSデチェッコのツーアタックなどで連続得点を決めたアルゼンチンが13-19とリードを広げる。日本はOH石川に代えてOH大塚、OP西田に代えてOP宮浦を投入するも、そのまま最後はOPリマのスパイクで18-25としたアルゼンチンがこのセットを取る。

第4セット

序盤はMBロセルのブロックで3-5とアルゼンチンがリードするも、OH石川のブロックやOP西田のスパイクで9-7と日本が逆転する。その後OHコンテのスパイクなどで13-13とアルゼンチンが追い付くも、MB小野寺のブロックやOH髙橋藍のサービスエースで18-14と日本が中盤で抜け出す。そこからアルゼンチンが2枚替えで入ったOPクカルツェフらの得点で20-19と1点差まで詰め寄るも、途中出場のOP宮浦のアタックなどで23-20と日本が点差を広げる。またアルゼンチンがOPリマのスパイクなどで24-23と再度詰め寄るも、最後もOP宮浦が決め切って25-23とした日本がこのセットを取り切る。

この結果日本が3-1でアルゼンチンに勝利した。

TOSHIKI’S MVP

日本:MB小野寺太志

12得点(うちブロック1)、アタック効果率84.62%

ミドルブロッカーながら2桁得点。サイドアタッカー3人それぞれ苦しい時間帯があった中で、驚異の決定力でクイックで得点を量産し、アルゼンチンコートを切り裂いた。またブロックでも得点こそ1点だったが、特にアルゼンチンが得意とするミドル攻撃を上手く抑えていた。

この試合は対格のMB山内もスパイク、ブロックともに非常に良かったし、そこに積極的に、抜群のタイミングでトスをあげ続けたS関田も見事だった。

アルゼンチン:OHファクンド・コンテ

19得点(うちサーブ1、ブロック1)、アタック効果率44.12%

チームの状態が上がらない中でも鬼気迫るプレーでチームを引っ張ったベテランアウトサイドヒッター。2セット目途中くらいから本当にいい意味で目がイッていて、彼のスパイクとサーブは最後まで日本にとって脅威だった。だからこそ試合後の目に涙を浮かべる姿にはいろいろ考えさせられた。

解説

苦しみながらも日本がアルゼンチンに3-1で勝利し、貴重な勝ち点3を獲得した。

個人的にこの試合の主な勝因となったのは①攻めのサーブ、②クイックによる得点の多さ、③粘りのブロックの3点だったと思う。順に説明する。

①攻めのサーブ

まずはサーブが上手く機能していた。

特に1セット目はOP西田が5本、OH髙橋藍が2本の計7本のサービスエースを奪い試合を支配した。このセットはほぼサーブで取った。

次の2セット目も逆転のきっかけを作ったのはS関田のサーブであったし、ここでサーブターゲットとなっていたOHパロンスキーを見事にベンチに下げることができた。

3セット目はその代わりに入ったOHマルティネスがサーブレシーブを安定させてアルゼンチンがセットを掴んだが、4セット目はOHコンテになるべくサーブを集めて彼の決定率を抑えたことでブレイクチャンスを掴むことができた。

OH髙橋藍が4セット目に決めたサービスエースは、例え触られていてもOHコンテのパイプ攻撃を潰せていた非常にクレバーなサーブだった。

②クイックによる得点の多さ

前回のドイツ戦の解説記事で日本のクイックは得点も少なく決定率も低かったことを課題に挙げたがそこがものの見事に改善され、この試合ではMB小野寺とMB山内によるクイック攻撃が終始存在感を放っていた。

MB小野寺は11得点で効果率84.62%。アタック得点だけならばOH石川とOH髙橋を凌ぐチーム2位の得点だった。またMB山内も6得点で54.55%とすばらしい数字だった。

アルゼンチンのミドルブロッカーはブロック力が高い選手が揃っていたのだが、それにも関わらずこの数字を残せたことは本当にすばらしい。

またサイドアウトの場面だけでなく、ラリー中でも積極的に使い続けたS関田の強気のトスワークにもあっぱれ。

欲を言えばミドルの攻撃が通ることで、サイドのアタック効果率ももっと高めたかったが、サイドアタッカーの調子がよくなくてもその代わりにミドルのアタックで得点できるのは強い。

ここまで日本がクイックによる得点に支えられたことは記憶にないので、ここに来て日本はまた大きな武器を得たと言っていいだろう。

③粘りのブロック

日本のディフェンスにおいてL山本を中心とするフロアディフェンスが良いのはいつものことであるが、この試合では日本のブロックも非常に良かった。

ブロック得点こそアルゼンチン8本に対して日本が5本と少なかったが、ブロックタッチ本数ではアルゼンチン29本に対し日本が38本と大きく上回っている。

中でもMB山内とMB小野寺を中心にアルゼンチンのクイックに対して上手くタッチを取ることができていた。

アルゼンチンのMBロセルは本来ならばクイックの決定率が非常に高く二桁得点を取らない方が珍しいくらいであるが、この試合はアタックでわずか3得点、アタック効果率10%に抑えることができていた。

特にMB山内はひとりで12本のブロックタッチを決めていて、彼のタッチで救われた場面が非常に多かった。

また4セット目にOH石川とOH髙橋藍のブロックでOPリマを数回ブロックできたことも非常に大きかった。

結論:日本のミドルがすごかった

もうこれに尽きる。

第1セットはOP西田のサーブだったが、それ以降は本当にミドルブロッカーの活躍があってこその試合だったと思う。

正直かつて日本のミドルは世界と比べるとイマイチなんて思っていたこともあったが、とんでもなく成長していたし、ここに来てその真価が発揮された。

クイックは力強く、ブロックは粘り強い。

日本もサイドだけではなく、こんなにミドルが輝く戦い方ができるのだ。しかも世界最高峰のオリンピックの場でだ。

もちろんセッターの関田のトスによる部分も大きいと思うが、この日のミドルブロッカーの活躍は本当に素晴らしかった。

ただ一方でドイツ戦に続いてアタックの数字が試合を通して安定しないOH石川とOH髙橋がやや気になる。次のアメリカ戦ではここの2人も活躍ももう少し見たい。

プールC順位表(7月31日終了時点)

1位 アメリカ★ 2勝 5ポイント
2位 日本 1勝 4ポイント
3位 ドイツ 1勝 3ポイント
4位 アルゼンチン 0勝 0ポイント

★準々決勝進出確定

次戦情報

予選プールC アメリカ戦

8月3日(土)4:00~(日本時間)

テレビ

NHK総合:3:50〜(Eテレ:6:00〜)

ネット配信

NHKプラス

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[配信日時]

7月27日(土)午後5時 男子#1 男子#2
8月 3日(土)午後5時 女子#1
8月10日(土)午後5時 女子#2
8月24日(土)午後5時 男子#3
8月31日(土)午後5時 女子#3
9月 7日(土)午後5時 男子#4
9月14日(土)午後5時 女子#4

(TBSテレビリリースより引用)

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写真:Volleyball World

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